渡辺吉鎔(1996)『韓国言語風景』

済州4・3をめぐる読書

済州4・3事件にまつわる本を読んできたので、まとめて記録。

はじまりは、チェッコリで金石範先生にお会いしたこと。
ご挨拶したものの作品をひとつも読んだことがなかったので、これを機に読もうと思い、スンボクさんにおすすめを聞きました。

すすめてもらい読んだのが『満月』。

大阪に暮らす済州島出身の男を主人公とした小説です。
男の母親は4・3事件のときに滝で銃殺されていて、大阪で毎年祭祀が行われている。
4・3の遺族たちを中心にした作品でした。



その後、チェッコリにクォン・ユンドクさんの新作絵本『나무도장』が入ってきました。
やはり済州4・3を題材とした作品で、物語の前後に歴史の解説もついています。
島の人を撃ち殺した側の警察が、その銃殺現場で生き残った赤ちゃんを育て、そのことを小学生になったその子に告げるという内容。

チェッコリでこの絵本をテーマにしたイベントを企画することになり、『나무도장』の日本語訳を作りました。

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今度は、この絵本を「済州島四・三事件を考える会」の記念行事で販売することになり、4月に記念行事に参加しました。
その行事で心に残ったのは、だれが悪者でだれが犠牲者だということよりも、島の狭いコミュニティで起きてしまった悲劇をどう乗り越えるか、どう許して関係を再生させるかという前向きな姿勢が示されていたこと。
済州島の歌や踊りにも触れて、自分のなかでもこのテーマに取り組む意味のようなものが少し見えた日でした。
この日、『나무도장』の絵本と日本語訳を金石範先生にもお渡ししました。

5月には、一橋大学で金石範先生が講演をするというので聞きにいきました。
金石範先生が「日本語訳よかったよ」と声をかけてくださって感動しました。
講演で、先生の大作『火山島』のもととなった「鴉の死」という作品への思い入れを聞き、これは読まなくてはと思いさっそく読みました。
「鴉の死」は、4・3事件真っ只中の済州島を舞台とした小説です。権力側につき、島の人たちを殺す側に立ってしまった男の苦しみにぞっとしました。



講演の後、金石範先生を囲んでお茶をして、そのときに一橋大学大学院のイ・ヨンスクゼミの方から
金時鐘さんとの対談を読んだほうがいいと教えてもらったので、それも合わせて読みました。
4・3について書き続けてきた作家(金石範先生)と、沈黙してきた作家(金時鐘)の対談。どちらも壮絶な人生です。



「鴉の死」と対談を読んだあと、『나무도장』の訳を考え直しました。

そして、6月26日に、『나무도장』の作者クォン・ユンドクさんをお招きして、チェッコリでイベントを開催しました。
「済州島四・三事件を考える会」の方々や金石範先生も来てくださって、歴史と平和について考えるいいイベントになりました。


その次は、対談の聞き役として本をまとめた文京洙さんが、2015年に新しく『新・韓国現代史』を出していたので、それを読みました。



そのまた次に、金時鐘さんの人生をモデルとした梁石日さんの小説『大いなる時を求めて』をともよんださんにお借りして読みました。
対談で語っていた内容と重なる部分も多くて、金時鐘という詩人が急に自分に迫ってきた気がしました。
岩波ブックセンターに行って、金時鐘さんの他の本も買ってきました。



本が本を呼んで、つながっていく読書。こういう読み方が今はおもしろく感じます。
つづきはまたこんど。
  1. 2016/07/23(土) 11:27:41|
  2. 韓国にまつわる本
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ハン・ガン 『菜食主義者』

『菜食主義者』 新しい韓国の文学 1
作者 ハン・ガン
訳者 きむふな
出版社 cuon
出版年 2011



読書会に向けて『菜食主義者』を読み直しました。

平凡に生きているかのように見えた一人の女性が、ある日を境に一切の肉食を拒否し、やや狂気がかった菜食主義者に。
肉食の拒絶は、家庭や社会に潜む暴力や干渉への抵抗なのか。
植物を志向していく主人公の周りで、突然の彼女の変化に戸惑い怒り本性をむき出しにしていく家族たち。
読んでいるときの胸をつかまれるようなつらさは言葉にならないけれど、力のある作品でなにかに吸い込まれるように読みました。

きむ・ふな先生の後書きの中のことばにもどきり。

恐ろしくも魅力のある小説です。

原作
〈채식주의자〉
作者 한강(1970~)
出版社 창비
出版年 2007

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  1. 2016/05/16(月) 21:31:36|
  2. 小説
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『日本語で読みたい韓国の本ーおすすめ50選』



『日本語で読みたい韓国の本ーおすすめ50選』を読みながら、ひといき。

解説を読んでいると、どれもみんな読みたくなってきます。

韓国の本のおもしろさに気づいてしまったことは、わたしの30代におとずれた幸運なのじゃないかしら。

K-BOOK振興会 公式ホームページ「K-文学.com」もおもしろそうです。
http://www.k-bungaku.com

  1. 2015/08/24(月) 00:41:13|
  2. 韓国にまつわる本
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『모두 별이 되어 내 몸에 들어왔다』 谷川俊太郎さんの詩を韓国語で 

韓国の詩人신경림さんと谷川俊太郎さん
お二人の詩、対詩、対談がおさめられた『모두 별이 되어 내 몸에 들어왔다』という本を読んでいます。

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『모두 별이 되어 내 몸에 들어왔다』というタイトルだけでも詩のようですが、これはこの本に出てくる신경림さんの詩の一部をつなげたものかと思います。

日本語版は『酔うために飲むのではないからマッコリはゆっくり味わう (日韓同時代人の対話シリーズ01)』という題で出版されていて、こちらは谷川俊太郎さんの詩がもとになっています。



学生時代、友人のくれた本がきっかけで、谷川俊太郎さんの詩に出会いました。
それから、大学の図書館にあった詩集をほぼ自分のものみたいにキャレル(大学4年生になるともらえた自分の席)の棚に並べて、ひまさえあれば、ぱらぱら読んでいました。

この人に会ってみたいなと思って、講演会などにも出かけました。
谷川俊太郎さんは、いつもTシャツ姿で、話し方も軽やかで、無邪気なおじさんという感じでした。

それから、大学の図書館を離れるときが来たので、自分でも詩集を集めて、それを大事に本棚に並べていました。谷川さんの詩集が大好きでした。読むと自由な気持ちになれて。でも、ちょっとした人生の転換期を迎えた数年前、大事に家のリビングに並べていた本たちへの愛着が重たく感じられて、衝動的にすべて手放してしまいました。今思うと大変に残念。

それから、また時が流れて、クオンさんでこの本を買いました。
ふと韓国語で読んでみたいと思って、韓国語版のほうを。

そして、読み始めました。どきどき。
谷川俊太郎さんの詩は、まず日本語で読んで、それから韓国語訳へ。
신경림さんさんの詩は、まず韓国語を読んでから、和訳を読んでいます。

谷川俊太郎さんの詩を韓国語で読んでいるということにじーんと感動して
東京の電車の片隅で幸福感に包まれています。

(詩の一部です)

花の名前を覚えたくない
꽃 이름 외우기 싫다



幼児の無邪気を失いたくない
어린 시절의 순진함을 간직하고 싶네



또 작은 것도 포함해서 나무를 무척 좋아하지만
그것들의 명칭을 외우는 일은 서투릅니다



どれも谷川俊太郎さんの詩の一節です。
こういうことばが昔も大好きだった。なんだか懐かしい。
言葉にも思想にもしばられたくない、自由でいたい、という詩。(とわたしは感じています)


신경림さんの詩のほうは、これからもう少し時間をかけて、じっくり味わいたいと思います。

  1. 2015/07/04(土) 00:22:35|
  2. ●わたしが読んだ韓国の本
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류시화の詩を読む 『그대가 곁에 있어도 나는 그대가 그립다』

韓国の現代詩をいろいろ読んでみようとしています。

書店でよく見かけて、なんとなく読むようになったのが、류시화(リュ・シファ)という人の詩。

今日は「그대가 곁에 있어도 나는 그대가 그립다(あなたがそばにいてもわたしはあなたが恋しい)」という詩集の中から
민들레」という詩を紹介します。

「민들레」は、たんぽぽ。
「민들레 풀씨」は、たんぽぽのわたげのことです。

たんぽぽが教えてくれたね
悲しいときは、悲しく泣いたら
たんぽぽのわたげのように軽くなるのだと


민들레
- 류시화

민들레 풀씨처럼
높지도 않고 낮지도 않게
그렇게 세상의 강을 건널 수는 없을까
민들레가 나에게 가르쳐 주었네
슬프면 때로 슬피 울라고
그러면 민들레 풀씨처럼 가벼워진다고

슬픔은 왜
저만치 떨어져서 바라보면
슬프지 않은 것일까
민들레 풀씨처럼
얼마만큼의 거리를 갖고
그렇게 세상 위를 떠다닐 수는 없을까
민들레가 나에게 가르쳐 주었네
슬프면 때로 슬피 울라고
그러면 민들레 풀씨처럼 가벼워진다고

  1. 2014/12/06(土) 23:38:31|
  2. ●わたしが読んだ韓国の本
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パク・ソンウォン『都市は何によってできているのか』新しい韓国の文学05



新しい韓国の文学05
『都市は何によってできているのか』

クオンさんの本です。

何とも言えない余韻が残る短編集でした。
都市の片隅の奇妙な出来事。
お互いの人生に一瞬だけ関わり合う孤独なひとたち。
ひきこまれてあっという間に読み終わりました。
短編がそれぞれべつべつのようで、細い線でつながっていくところがよかったです。

この一冊で、韓国文学を読もうという気になりました。

このシリーズ、少しサイズは違うのですが、紙の感じや重さ、翻訳本らしい空気が、新潮クレスト・ブックスを思い出します。クレスト・ブックスにはまっていた時期が懐かしいです。
好きだったのは、『その名にちなんで』『世界の果てのビートルズ』などなど。


それと、すごく細かいことですが、この本の中で、韓国語の翻訳っぽいなーと思ったところが個人的には3ヶ所。

①「変わったことはなかったでしょう?」というお隣さんの挨拶
별일이 없으시죠? という感じ?

②「二度と再び」というくりかえし。
「두번 다시」の訳?

③「すでに流通期限がすぎたはずだぞ。」
「流通期限」は韓国語の直訳かしら

そんな発見も楽しんだ読書でした。

  1. 2014/08/20(水) 22:55:28|
  2. 小説
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